「約束の場所で」
愛した人からの14年越しの手紙。
1990年7月。世間は夏休み。
高知県柏島。殺風景な場所によく目立つ赤灯台。
そこは、スナックで働く母と二人暮らしの高校生、
若藤 真由美(わかふじ まゆみ)のお気に入りの場所だった。
夏休み、そこに現れた専業主婦の母と保険会社の社長を父親にもつ高校生、
敷地 陽子(しきじ ようこ)。
生きづらさを感じていた彼女達は、居心地が良く馬が合うお互いに惹かれていく。
長期休みにしか会えず、手紙のやりとりをする毎日だったが、
二人の世界は確実に楽しいものになっていった。
見ると幸運が訪れるという「だるま夕日」を見にいく二人だったが、見ることは叶わず、やもなくして、バブル崩壊による倒産で変化していく陽子の家族。
真由美の母の突然の入院。不安にかられる真由美に
「何があっても傍にいる。また春休みになったら会いにくる」
そう言って、お揃いのネックレスを真由美へ渡す。
しかし陽子は次の日から真由美の前に現れることは無くなった。
歳を重ねた彼女たちはきちんと大人になれたのだろうか。
学生時代と青年期の二つの時間軸で進む、
時代の波にのまれた二人の苦くて淡い物語。