ル・コルビュジエに学び、「人間にとって建築とは何か」を問いつづけた、20世紀の日本を代表する建築家・前川國男。その戦後のあゆみを描いた『未完の建築』(みすず書房)の刊行を記念したトークイベントです。著者で最晩年の前川に師事した建築史家の松隈洋さんと、ひとり出版社・夏葉社の島田潤一郎さんをお招きし、「本のある空間」をめぐってお話しいただきます。
松隈さんによれば、前川國男の戦後は小さな木造の紀伊國屋書店の設計から始まりました。その後、神奈川県立図書館や国際文化会館・図書室、国立国会図書館など大きな公共図書館を手がけていきますが、そこには一貫して「大らかに人を招き入れ包みこむ」空間が実現されているといいます。
また前川事務所のスタッフとしてこれらの設計を担当した鬼頭梓は、独立後、日野市立図書館・館長の前川恒雄と出会い、誰でも自由に手に取り本を借りることのできる戦後型図書館のさきがけ、日野市立中央図書館を前川とともにつくりあげたそうです。
そして島田さんは、前川恒雄の『移動図書館ひまわり号』の復刊、遺稿集『未来の図書館のために』の刊行をとおして、前川の思想を高く評価し、鬼頭梓の建築にも大きな関心を寄せています。
そんなふたりが、前川國男と前川恒雄、鬼頭梓の仕事を通して「本のある空間」をめぐり、静かに語り合う90分です。