東京からだいぶ離れたどこかの田舎町。
駅前の小さなロータリーの片隅で1台のフードトラックが店をオープンさせる。
「タピオカ」と書かれた看板。
この店は、この町で唯一、タピオカミルクティーの飲める店となった。
しかし、いつまで経っても買いに来る客は現れない。
下校中の小学生が言う。
「タピオカ?え、今?」
タピオカブームはとっくに終わっていた。東京とほぼ時を同じくして。
過ちによって全てを失い、東京にいられなくなった人。
全てを手に入れ、東京にいる必要がなくなった人。
一人でいる事を選んだはずなのに。
一人になりたいと思ったはずなのに。
この町は、何もないように見えて、案外何でも手に入る。
タピオカも、マリトッツォも、ヤサシサも。