姉が事故で死んだあの日以来、私たち家族はあからさまに支柱を失った。父は毎日欠かすことなく、生前に彼女が好きだったいちご大福を仏壇に供え続けている。 飾られた写真立ての中の彼女はあの頃のまま、いつだって天使のような笑顔だ。気がつけば私は彼女の歳を追い越してしまった。ここにあるのは、お姉ちゃんというスターを失い、ぎりぎりに体裁を保っている家族という形の燃え滓だ。息苦しいリビングには誰も集まらない。猫すら寄り付かない。 こんな時、お姉ちゃんだったらどんな顔をするんだろう。どんな言葉でこの場を 和ませてくれるのだろう。見果てた神のきまぐれなのか、歳下のお姉ちゃんが化けて出た。お姉ちゃん曰く、あの時からずっと我が家で地縛霊として居座っているらしい。そこに二人組の女霊媒師がやってきた。彼女たちは除霊をしながら、全国を旅してるんだとか。夢のような再会はあっという間に終わりの時を迎える。 残された人々と死んでしまった人との思いが繋がるお別れロスタイム。 月シアがひと夏の奇跡を描いた感動作。乞うご期待です。