SUPERNOVA stage004
【チケット料金】
S席 ¥7,000(前2列保証/エリアごとに自由席)
A席 ¥5,000(3列目からのお席/エリアごとに自由席)
【幻の初稿_シーン0を先行公開】
「朝日が柔らかい泡に消えていく 夜は影法師すら嘲笑う。拝啓、今は居ないあなたへ。」
シーン0 「はじまり」
シャワーの音が鳴り響いている。
舞台上の真ん中には牢獄の中に座る毬井悟、何かをぶつぶつと喋っている。
【毬井】 ………………………………
アポロ11号が、月面着陸しました…………
これは…………人間にとっては……………
小さな、一歩だが……………
人類にとって……………偉大な一歩だ………………
僕は、…………………宇宙…………………
いつの間にか現れた雨宮唯はモノローグを始める
【雨宮】 目覚まし時計で起きられなくなったのは、いつからだろう。
シャワーの音が止まなくなったのは、いつからだろう。
私が、何をもってして私であるかが分からなくなったのは、いつからだろう。
雨宮は毬井の側に近寄る。
すると俳優たちは「語り部」として舞台上に現れ、円を描くように語り始める。
【雨宮】 色々な一人称を試した時期がありました。
【いち】 わたし 4
【に】 あたし
【さん】 うち
【よん】 ぼく
【ご】 おれ
【ろく】 せっしゃ
【雨宮】 せっしゃは、ちゃうやろ。
【一同】 あははははは。
【雨宮】 何が正解か、もう分からんかった。
ただ網膜に焼き付いて離れないのは、あなたと見た、明神岬の崖の上の光景なのです。
そう、私たちが暮らしていた淡路島のことです。
この世界を焼き尽くしてしまいそうなほどにまん丸な夕焼けが
水平線の下へ落ち征くその光景は美しかったのです。
語り部たち その場に倒れる
波の音、毬井と雨宮の会話
【毬井】 みぃ、みぃ。
【雨宮】 「みぃ、というのは彼の独特な言い回しで、見てみ、という意味です。 同じ神戸出身のくせに、変な話しかたをする人でした」
【毬井】 やっほーーーーー。
【雨宮】 毬井くん。山びこは、返ってこーへんねんで。
【毬井】 そうなん?
【雨宮】 だって海やもん。
【毬井】 唯は物知りやぁ。
【雨宮】 毬井くんが知らなすぎんねん。
【毬井】 たーまやーー―――。
【雨宮】 あははぁ、花火もちゃうで。
【毬井】 おれなぁ、夕陽見てると涙出そうになる時がある。 なんでやろなぁ。
【雨宮】 毬井くんってさあ。
【毬井】 うん?
【雨宮】 なんで、人殺したん?
雨音
回想シーン
毬井が職員の目をえぐる
【職員】 あかん毬井やめろ、やめろ。
【毬井】 目や、お前の目、あかん、なくなれ。
【職員】 ああ、ああああああああ。
【毬井】 なくなれ、なくなれ、なくなれ、なくなれえええええええ。
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【獅子倉】 あいつやばいど、逃げな殺されるど。
【矢島】 そ、そ、そんなこと、し、しな、しない。さとるくんやもん。 6
【獅子倉】 あいつ人殺しやぞ!? 見たやろ、目の前で眼球ぐっちゃーーーーーって。
【半沢】 逃げても逃げんでもどうせ殺される。ほな悟くんに殺された方がまし。
【獅子倉】 ボケコラ、正気もどらんかい。
【矢島】 せ、せ、せや、唯ちゃん。ゆ、唯ちゃん、どこいった、ですか。
【獅子倉】 俺が知るかぁ、聞くなアホンダラ。
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【毬井】 ゆいー。
【雨宮】 うん。
【毬井】 みてみ、これで、つらいこと全部なくなったでぇ。
【雨宮】 ………………なんで。
【毬井】 え?
【雨宮】 ハヤシさん、死んでる?
【毬井】 はやし……………あ、これか。 えっとなぁ…………わからんわ、あははぁ。
【雨宮】 まりいくん。
【毬井】 ゆーい。ええか、ここ出たらなぁ、どっか島や。島いき。俺いつか会いに行くから、絶対見つけるから。
【雨宮】 まりいくんは、どこいくん。
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【獅子倉】 もしもし! いま、人殺しが起きてて…… 7
【半沢】 瑞樹、瑞樹! あかん、やめて。
【獅子倉】 うっさいねん離せ。はいそうです、場所は「ひかり学園」で……
【半沢】 毬井くん奪わんとって、いやや、あかん。
【矢島】 まって、何の匂い、これ。
【獅子倉】 ……え?
火が巻き起こる。
【群読】 黄金色のマリーゴールドが世界を包み込んだ。 私たち(ぼくたち)が暮らす小さな世界を壊した。
壊して、壊して、新しく始まった。
【いち】 本日未明、神戸市内で火災事件が発生いたしました。
【に】 事件の発生した孤児院「ひかり学園」では住み込みで働いていた4名の職員が犠牲となり、
【さん】 遺体に暴行を働いた形跡があることから警察は殺人の可能性もあると判断し、
【群読】 尚。容疑者「毬井悟」は現在も逃亡中の模様です。
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インターホンの音。唯が扉を開ける。
【毬井】 ゆーい。
【雨宮】 毬井くんと再会を果たしたのは、あれから、10年の月日が経った先月のことでした。
【毬井】 ここ、ええところやぁ。淡路島にしてんなぁ、いっぱい回ってもーたわぁ。 8
【雨宮】 なんも、かわらん、毬井くん、なんも、変わらんあの頃のままで。
【毬井】 ゆい。おなか、すいた。
【雨宮】 もう一度、始める。 林の片手に、火薬銃が持たれている。
【林】 よーい、ドン。 まるでリレー大会を始めるように一同が学生服をおもむろに着て、大縄跳びの準備を始めだす。
【雨宮】 これから始めるのは私たちにまつわる「物語」です。
あーえっと、物語というのは、“もの”を“かたる”と書きまして……
つまるところ、語り部が必要なわけでございますが。
そもそもわたくし、趣味で小説のようなものを書いていたり……
ま、ただの妄想癖と言いますか……
私ひとりでそれを叶えるのは難しいわけでございまして他のみんなにも……
【海斗】 ユー、話、長いYO。
【香音】 だるいからはやくー。
毬井が大縄跳びを渡す。
【毬井】 唯。
【雨宮】 ……せーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーのっ !
大縄跳びを始める、一同。
舞台「泡沫の空に光を飛ばした」 開演
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