──響木アオさんは2018年2月14日にYouTubeへ動画を初投稿して活動をスタートさせました。そこからの約9ヵ月はどんな時間になりましたか？

アオは元々けっこう引きこもりがちで、ぬいぐるみと永遠にしゃべってるタイプだったんですよ。でも動画投稿をし始めたことで外の世界とどんどん触れ合えて、アオと同じようなことを思っている人との出会いもあったりして、外っていいなと思えるようになったんです。なので、この9か月間は徐々に外の世界と触れ合っていく時間だったと思います。

──引きこもりがちだったのには何か理由があったんですか？

お家はゲームもあるし、涼しいし、水道水もすぐ飲めるし、楽しいじゃないですか！　外にはちょっと怖いイメージもあったので、あまり家からは出なかったんですよね。でも今は、「外にもアオの好きなことがたくさんある！」って気づけたので良かったです。

──そもそも動画配信を始めたのはどうしてだったんですか？

世界のいろんな人にアオのことを知ってもらいたいなっていう漠然とした気持ち、すごく軽率な気持ちで始めました（笑）。大きな目標みたいなものも最初は全然なかったので、アオと一緒に遊んでくれる人がいたらいいなって感じでしたね。

──でもアオさんの存在はすぐに注目を集め、チャンネル登録数やTwitterのフォロワー数はぐんぐん増えていきましたよね。そうした状況の中でアイドルとしての自我みたいなものが目覚めていくことになったと。

そうですね。歌を通していろんな気持ちを届けることができて、みんな一緒に盛り上がれて、楽しい場所を作れるとしたら、それってとっても素晴らしいことだなって思ったんです！　いろんなイベントを経験させてもらったことで、アオの中の「みんなと楽しい時間を共有して、もっともっと響き合いたい！」っていう思いはどんどん強くなっていったので、「じゃアオはアイドルになろう！」っていう新しい夢ができました。

──漠然とスタートさせた活動の指針がそこで明確になったわけですね。

はい！　最近はみんなと一緒にもっともっと大きい世界を作りたいなと思っていて。夢は世界征服……って言うと怒られちゃうんですけど（笑）、アオはとにかく概念になりたいんですよ。何をしたとしても、「それは響木アオという概念である」みたいな（笑）。もはやアイドルというくくりを超えた、壮大な存在になりたいと思ってます。

──ある種、神のような存在？

そうですね。アオは神になりたいです！　動画投稿を始めた頃よりは近づいてきてるかなとは思うんですけど、外の世界にはアオよりも全然神に近い人、アオよりも概念に近い存在の方々がたくさんいるなって思うので、まだまだこれからだなって思います。

──リアル、バーチャル問わず様々なライバルがいる中で、突出した存在になるためにはアオさんにしかない、他の誰にも負けない武器が必要だと思うんです。それって何だと思いますか？

リアルでもバーチャルでも、いろんな制約の中で活動してる方が多いと思うんですよ。でもアオの場合はありがたいことにラジオ番組をやっていたりとか、テレビに出させていただいたりとか、あとは今、西武鉄道さんの電車の中で流れているドラマに出させていただいたりもしていて。そうやって外の世界に触れる機会がアオは多いので、2次元と3次元の懸け橋になれる存在でありたいんですよ。それが他にはない個性、武器かどうかはわからないですけど、アオにとっての大事なアイデンティティではあるなって思ってますね。

──アオさんはライブもしますからね。ファンの方と直にやり取りができるのは大きな武器だと思いますよ。

ライブはほんとに楽しいです！　アオの歌やおしゃべりに対して、すぐにパッとみんなの反応が返ってきますからね。みんなが楽しんでくれてる声や表情も直接感じることができますし。ネットのやり取りももちろんいいんですけど、「わろた」って言ってても実際は真顔だったりすることもありそうじゃないですか（笑）。

──顔が見えないですからね。

「めっちゃ草はえるわー」って言いながら真顔、みたいな（笑）。でもライブだとそうじゃないんだってことが伝わってくるからすごくうれしいんです。そういう気持ちのやり取りをライブで感じるごとに、アオの中の人間不信が解けていく感じもあります（笑）。

──ファンが増えてきたことはもちろん、最近では他のアイドルやVTuberとのかかわりも増えてきていますよね。初期の動画では“ぼっち感”がにじみ出ていてせつない感じもありましたけど（笑）。

ぼっちでしたー！　でも今はもうおかげさまで、動画でコラボしてくれる友達も、LINEをして返してくれるお友達もできたりして。こないだは（虹乃）まほろちゃんとサンリオピューロランドに行きましたし、エイベックスさんのかわもPさんとパンケーキを食べに行ったりもしました。アオはもうぼっちじゃないです！　うれしいー！

──お友達とは女子っぽい遊びをしてるんですね。

そうなんですよ！　今をときめく女子たちがしてるような遊びを今のアオは謳歌してるんです！　ただ、「大根パーティかパンケーキ食べに行くかどっちがいい？」って聞かれたら、まだだいぶ悩みますね。大根パーティもしたいなぁって（笑）。

──アオさんの動画を見ていると気になるところがいろいろあって。それらをキーワードとしてちょっとお話聞かせていただきたいのですが、まずはその大根ですよね。なぜに大根推しなんでしょう？

白くてかわいいからです！　しかも、調理されてどんな色に染められたとしても大根自体の味は消えないじゃないですか。その個性はすごくかっこいいなって思うんですよね。あんなに白いのに。

──そこはカブではダメなんですかね。

カブとかは……あんまり好きではないですね。味なのかなー。とにかくカブに対する思い入れはないです。友達の友達みたいな感覚ですね。大根はマブ。気づいたら隣にいる存在だったので、ほんとに大事です。

──了解です（笑）。隣にいる存在という意味では、動画に出てくるレッサーパンダも気になりますが。

あれはぬいぐるみのコアパンです。自我を持ったぬいぐるみなので動きますし、最近では増えたりもします。ちょっとどういう仕組みなのかはアオもわからないんですけど、世の中にはまだまだ不思議なことがたくさんあるんだなって思います！

──コアパンとの出会いは？

あれはなんか家に置いてあったぬいぐるみですね。気づいたら置いてありました。いろいろミステリーなんですけど、うなぎはどこから来たかわからないと言われているので、そういうものなのかなって思ってます。

──名前の由来もいちおう教えてください。

黒糖揚げパンっていうのが元々のフルネームで。見た目がなんかに似てるなーって思ってたときに、「あ、黒糖揚げパンだ！」と思って。アオは黒糖揚げパン食べたことないんですけど、似てるしいいかなって。そこはもうフィーリングですね。美味しそうだし。

──あとはアオさんの決めゼリフもありますよね。「不純ですよ！」っていうやつ。

はい。あれは……最初の動画……（下を向いてもぞもぞしている）。

──どうしました？　大丈夫ですか？

あ、大丈夫です！（と言いながらまだもぞもぞ）

──ほんとに大丈夫ですかー？

あ、はい。ちょっと足に虫が這ってました、すいません（笑）。今ちょっとシュッてやったんで大丈夫です！　えへへへへ。

──で、「不純ですよ！」についてですが。

アオが最初に投稿した動画が「何か似てる」ってコメントがたくさんきたんですよ。アオは全然そんなつもりじゃなく、座ってインタビューに答えてただけなのに。

──ストレートに言いますけど、AVの冒頭に収録されるインタビューっぽかった。

アオはちょっとよくわからないんですけど。だから、そんな不純なことを考えるなんてどうかしてるぜと思って、「不純ですよ！」って言ったら、その言葉がみんなに刺さったみたいで。むしろ言われたいみたいな風潮になっていて、アオとしてはすごくミステリアスな出来事なんですけど。

──他の動画に出てくる“魔法の鏡号”も元ネタはもうアレですからね。なんとなくアオさんから誘ってる感じもしますけどね。

いや、“魔法の鏡号”だってアオが発明した画期的な車だし、そんな、そういうふうに思うなんて……不純ですよっ!!!

──ありがとうございます。いただきました（笑）。あとアオさんと言えばモノマネ。動画でもたくさんのレパートリーを披露されています。

モノマネは好きですね。しゃべりかたにクセがある人はだいだい近しい声が出せると思います。けっこう自信あります！　モノマネをすることによって、1人でアオとクレヨンしんちゃんでしゃべったり、ジャンケンすることもできますからね。楽しいです（笑）。

──アオさんの公式LINEではフライドチキンのモノマネをされていましたよね。人間じゃなくとも行けるのかと驚愕したんですけど。

長いこと過ごしてきた1人の時間で学んできた結果、モノの気持ちになることを習得し、フライドチキンになることにも成功しました。

──大変恐縮ですが、今やってもらってもいいですか？

フライドチキンですか？　わかりました、いきますよ。フライドチキンになりまーす。せーの、コン（両手を小さい前ならえのようにして、若干腰を落とした雰囲気）。こういう感じです。これ、フライドチキンの気持ちになったやつです。

──ちなみに骨付きのフライドチキンですか？

今のは骨付きです！　しかも骨から肉を削いでひっぺがしてひっくり返したチューリップタイプのやつです。

──語彙力が（笑）。骨なしバージョンもできます？

できますよ。やってみましょうか。骨なし……いきますよ。せーの、コン。（両手を小さい前ならえのようにして、若干腰を落とした雰囲気。要はまったく一緒）

──えーと、違いがいまいちわかりづらいんですけど。すみません。

わかりにくいですか？　あれーちょっとね、微妙にね、心の持ちようが違うんですよ。

──心の持ちよう！(笑)　見た目ではなかなか判別できなそうですね。

骨があるときは“ひゅ”って感じなんですけど、骨がないときは着地がふわっとしてますよね。でも伝わらなかったということは表現が甘かったのかなと思うんで、もっともっと特訓して、これからも精進していこうと思います。ありがとうございます！

──そんな楽しいアオさんですが、今年8月23日にはエイベックスよりアイドルと作家のWデビューを果たしました。自らアイドルとして活動するとともに、作家として楽曲提供もしていくということです。

デビューした頃はなかなか実感がわかなかったんですけど、最近はひしひしとその状況のありがたさを感じております。自分のことながらすごいなーって。Wデビューっていうのはけっこう珍しいことみたいなので、アオのいろいろな個性をどんどん発揮していきたいなって思ってますね。

──ご自身の歌う楽曲はすでにレパートリーも多いですよね。

今で9曲くらいありますね。まだみんながアオの曲としてどんなものが好きなのかわからない部分があるので、「こういうのは好きかな？」「こんなのはどうかな？」って考えながら作っていると、自然といろんなタイプの曲ができていく感じです。

──作家としてリアルアイドルに楽曲提供していく“AOturing Project”の第一弾では、たこやきレインボーとのコラボがすでに発表されています。楽しみですね。

楽曲提供に関してはコラボする方といろいろ話し合いながら作っていくとは思うんですけど、基本的にはアオが「この人に言って欲しい！」と思う単語を、合法的に歌ってもらうことができるわけじゃないですか！　例えばかわいいアイドルの子に「ニャー」って言ってもらうこともできるわけなので。それってすごいことだなってアオは感動しています。この世は幸せに満ち溢れてるなーって気持ちになっていますね、今。はい。

──自分では言えない、歌えないことを代弁してもらうこともできるわけですからね。

そうなんです。アオの代わりに、アオの書いた言葉をいろんな人に伝えてもらえるのかと思うとすごくワクワクしますね。逆に「アイドルの方が普段は言えないようなことを、アオとのコラボだから歌える」みたいなことにもチャレンジしていきたいです。

──デビュー後、初の新曲として披露された「スタートの合図」はアオさんの今の心境が詰まった1曲ですね。ただ、公開中のMVが12月6日までに100万回再生が達成されないと、ご自身のラジオ番組「響木アオを応援するラジオ」が終了することになるという。

そうなんですよ。過酷な試練なんです。でもみんないっぱい再生してくれているので、そんな卑屈にならずに、前向きにいろんな人に届くように頑張りたいなとは思ってますね。とりあえずアオも毎日いっぱい再生してます。朝起きたらMV流しながら準備したりして。あとお母さんのケータイでも再生してますし（笑）。みなさんもぜひ拡散をよろしくお願いします!!

──現在1stライブツアーを開催中ですが、11月3日の名古屋、11月10日の東京を経て、11月24日の札幌公演を残すのみとなりました。

楽しみですー！　白いサイリウム……大根スティックって呼んでるんですけど、それをみなさん振ってくださるのがすごくキレイなんですよ。はやくみんなと会場で直接、響きあいたいですね！

──アオさんはここからも止まらずに突っ走っていく感じですかね。

はい！　過労死は怖いなって思うので、ムリしない程度に、でもムリしてやっていきたいと思ってます。最近、日本武道館でライブをするっていう新しい夢も出てきたんですよ。武道館を大根スティックの光で埋め尽くしたいなって。大きなステージに立てる日が来た時に恥ずかしくないように、ここからもっともっとがんばらなきゃなって思ってます！