ライブハウスも競争社会。
新しいもの、アイデアは、すぐに取り入れる
■あと、チェルシーといえば毎週水曜日に開催している無料ライブも有名ですけど。無料ライブをやりだしたきっかけは?
カッコ悪い話なんですけど、売り上げが落ちてくると何か考えなきゃなって思うんです。例えば、売り上げが5万円という日があったとする。それじゃあウチは足らないわけですよ。だからといって、そこに無理やり他のバンドをブッキングしようといろいろ電話して、バンド側も仕方なく出てくれる、みたいな感じでやっても、バンドも面白くないだろうし、客だって入らない。そういうことを繰り返してちゃ意味がないなと思って。そんなことをやるぐらいなら、先読みでその1日を捨てて無料ライブにして、いろんなチャンスを広げたほうが、同じ赤字でも将来得になるかなと思って始めたんですよね。それで、その日は新しくこれから出てきそうな人たちをブッキングしてやりだしたんです。
■ああー。ジャンルレスも無料ライブも川﨑さんの中にライブハウスの“経営者”としてのフラットな視点があるからこそ、昔のやり方にこだわらない新しいアプローチにスパンとシフトできるんだなと思いました。新しいアプローチの中では、ニコ動で「チェルシーホテルチャンネル」という番組をやるなど、SNSなどの新しいメディアも早くから積極的に取り入れてらっしゃいましたよね?
それも、ここをいろんな人に使ってもらうという考えの延長線上ですね。新しいツールを取り入れたほうが新しい人が来るかな、みたいな考えがあるので。だから新しいもの、アイデアは、すぐに取り入れるようにしてます。ライブハウスも競争社会なので、他がやってないことを1つでも早くやるというのはいつも思ってますね。
もはや戦いではなくなった!?
毎年4月28日に行われる「渋谷 vs 四谷」早朝イベント
■“4月28日は渋谷か四谷か!?”というユニークなバトルイベントを立ち上げたのも、たくさんの人にここを知ってもらうのが目的ですか?
そうです。アウトブレイクっていう四谷のライブハウスの佐藤“boone”学という店長と昔から仲よくて。彼が僕以上にいろいろ新しいことをやるんですよ! ちょっと暴走気味ですけど(笑)。彼が暴走しているイベントの一つに「早朝イベント」というのがあって。それは“日曜日は2度来る”というスローガンの元に、朝6時からライブをやるんですよ。でも「面白いけど、それを四谷でやってもねぇ」って話をしたら、向こうも渋谷でやるチャンスをずっと探ってたんでしょうね(笑)、それで思いついたのが“4月28日は渋谷か四谷か!?”というイベントで。早朝とか関係ないのに、なぜか戦うのは早朝なんです(笑)。しかも、やってみたら渋谷も四谷も関係なく、すごい会場の一体感が生まれるんで。それが面白くてもう4、5年やってるんですよ。
■一体感が生まれたら、もはやバトルではないですよね?(微笑)
そこが本当に本末転倒になってしまっていて。誰も戦う意識がないんですよ、四谷と渋谷で(笑)。仕方ないから、去年は最後に俺と佐藤の“あっち向いてホイ”で勝敗を決めて。俺が負けたんで、今年は渋谷で開催します(笑)。
■負けた方が翌年の開催会場になるんですね(笑)。川﨑さんから見て、チェルシーが始まった頃から比べて、渋谷は変わりましたか?
変わりましたよ。ここの裏は様変わりしましたね。昔はレコード屋とかが多かったんですけど、今は飲食店ばかりですから。それも、ここら辺にライブハウスが集まったことで、人の流れが生まれて。ライブの後に飯を食うからという流れができたからじゃないかなと俺は思ってるんですけどね。
■では、ライブハウスはどうでしょうか?
社会の中でのライブハウスのあり方が変わってきたと思います。昔は“ライブハウスはこういうところだから”という押しつけがあった。店員も感じ悪くて。でも、売り上げが下がっていって、お客さんを大切にせざるを得なくなってきたんですよ。
■今の時代は?
ええ。それは絶対にあると思います。昔はどこのライブハウスに行っても感じ悪かったけど、今それをやっちゃうと、バンドからもお客さんからもそっぽ向かれて文句言われますから。それは体感として分かっています。今はマナーとかちゃんと守らないと、ネットでなに言われるか分からないですからね。
■それに伴って、お客さんの“ノリ”も変わりましたか?
バイオレンスな類のものは激減しましたね。昔は喧嘩とかもありましたけど、今は全然ないです。タチの悪い客も本当にいないです。至って平和ですよ。今のライブハウスは。
■ライブハウスのあり方はこれからも変わっていきそうですか?
5年後全く想像できないようなことが起こるほどのすごい変化はないと思ってます。結局、演奏するということはみんなやり続けるのかなと思うんで。まあでも、変わったら変わったで、それに合わせて面白くできればいいかなと思いますけど。
■では最後に。これからのチェルシーホテルの展望を聞かせてください。
最初からこういうことをやっていこうというのを掲げてやってなかったんで、気持ち的には今までと変わらずで。強いて言うなら、アンテナを伸ばして、新しいことをどんどん柔軟に取り入れていければいいかなと思っています。
★CHELSEA HOTEL★
〒150-0042 渋谷区宇田川町4-7 トウセン宇田川ビルB1F
TEL:03-3770-1567
■LIVE
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