多くのカルチャーを発信し続けながら、日々猛烈なスピードで時代とともにアップデートを繰り返す街、渋谷。その渋谷の東急ハンズの向かいに立つビルのB1にあるCHELSEA
HOTEL(2003年~)、1FにあるStar lounge(2010年~)は、ライブハウス激戦区でもある渋谷の中でも、オシャレでゴージャス、煌びやかな内装が特徴のライブハウスだ。この2店で総支配人を務める川﨑秀一さんに、渋谷のライブハウスシーンについて、その中で生き残るためのサバイブ術について話を訊いた。
他のライブハウスにはない空間作りで
いい音を出せるよう追求されたライブハウス
■川﨑さんがチェルシーホテルの支配人をやるようになったきっかけから教えてもらえますか?
僕はもともとバンドをやってまして。ウチの会社はレーベル(LD&K)もやっていているので、そこからアーティストとしてCDを出したんですよ。それで、主催イベントとかもやってたんで、チェルシーができたタイミングで、社長から「ここでイベントやってくれ」みたいな感じで言われたんで頻繁にやってたんです。そうしたら、ここのブッキングの人間が辞めるタイミングで「ブッキングをやってくれないか」と社長に言われたんですよ。それで最初はブッキングスタッフだったんですけど、2年ぐらいして店長が辞めたんで、そこから支配人になりました。意味的には店長なんですけど(笑)。
■チェルシーホテルという名前の由来は?
これはNYに「The Hotel Chelsea」というのがありまして。そこはアンディー・ウォーホールが住んでいたり、セックス・ピストルズのシド・ヴィシャスが恋人のナンシーを殺した言われる場所としても有名で。そういうエピソードに、オーナーであるウチの社長が何かを感じて、チェルシーホテルと名付けたんだと思います。今でも、本当に紛らわしい名前で嫌だなと思ってますね(笑)。
■オープンした当初、ライブハウスなのにホテルとつくので不思議な感じがしました。
だから、今でも「今日シングル空いてますか?」って電話がかかってくるんですよ(笑)。一番面白かったのは「そちらにウチの娘が泊まってませんか?」という電話がかかってきたときがあって。家出かなんかしちゃってたんでしょうね。それで「泊まってません」と答えたら、「娘の名前も言ってないのに即答するなんて怪しい」と疑われて。「いやいや、ここは泊まるところじゃないんで」って(笑)。そんな電話もかかってくるんですよ。
■上階にスターラウンジができたのは……。
チェルシーができてから7年後ですね。前からもう1店舗やろうという案が社長から出ていて、渋谷で物件を探してたんですね。そうしたら、たまたまバイク屋さんだった1階が空いたんですよ。2階に今の“SHIBUYA
THE GAME”というクラブが入ったって聞いて、地下1階がチェルシーで、3階はミルキーウェイ。こんな物件の1階で何の商売ができるんだ。こりゃウチでやっちゃうしかないだろうってことで、ウチがやるようになったんです。渋谷のちょっと離れた他の場所で決まりかけてたんですが、今となっては、同じビル内でよかったなと思います。
■地下と1階だから何かあったらすぐ足を運べますもんね。
この距離だから、自分がブッキングしても2店舗両方見られるんですよ。2店舗目が離れた場所だったら、同じ渋谷でも行ったり来たりがまず大変だし。本当にここでよかったなと思いますよ。機材の貸し借りもすぐできるし。何かと便利です。
■スターラウンジのほうの名前の由来は?
あまり知られてないですけど、これは僕がつけました。チェルシーホテルの系列店ということで、ニューヨークのホテルチェルシーを調べてたんですよ。グーグルアースとかマップのストリートビューでホテルチェルシーを見ていたら「スターラウンジ」というお店があったんですよ、ものすごい近くに! 公式の発表では、僕がニューヨークのホテルチェルシーに行ったときに「スターラウンジ」というお店があって、そこがすごくよかったからこの名前にしたと伝えているんですが、本当は行ってない(笑)。ネット上で行っただけ。
■なるほど(笑)。チェルシーホテルもスターラウンジも、他のライブハウスにはないような空間作りが特徴だと思うんですが。
はい。自分も初めて来たときは“変わってるライブハウスだな”と思いましたから。だから、実際ウチはこの他のライブハウスにはない雰囲気、変わった内装を気に入った人がまず来てくれて。そこから広がっていくというのが多いんですよ。あとは、これは手前味噌になっちゃうんですけど、音がいいと思うんですね。もしかすると、この内装の木の部分とかが影響してるのかもしれないですけど。
■床も壁もバーカウンターも木ですもんね。
ええ。なので、音の部分は僕たちもよりいい音を出せるよう、追求して取り組んでいます。
ジャンルで制限することをやめたら
広がりを見せて時代のブームに
■では、様々なライブハウスが点在している渋谷エリアの中で、チェルシーはライブハウスとしてどんなカラーを打ち出していこうと考えていたんでしょうか。
早い段階で僕が考えたのは、2004年ぐらいのライブハウスは、それぞれに色があって、ジャンルに特化しているライブハウスばっかりだったと思うんですよ。
■ええ。昔はどこもそうでしたよね。チェルシーも最初はジャンルのカラーがあったんですか?
ウチもなんとなくパンクと寄りだったと思いますよ。でも自分がちょっと仕事してみたら、ジャンルの制限をしていると、呼ぶバンドが限られてくるというか。簡単に言うと、“なんでもあり”にしちゃったほうが儲かる気がしたんですよ。だから、ジャンルで制限するのをやめて、早い段階から誰が来てもOKですよ、というスタイルに変えて。
■それで来るもの拒まずのオールジャンルでOKにされたんですね。
はい。それは今もそうです。
■スターラウンジのほうもそうですか?
はい。売り上げ重視で考えていくと、そうなるなと。