バンドマンにできることはないだろうか?
震災をきっかけに急遽立ち上がった「緊急ナイト」
■クハラさんは2011年3月に東日本大震災の直後に、新宿レッドクロスで「緊急ナイト」というイベントを立ち上げて、緊急バンドを結成して、現在まで5年間で、20回近くイベントを開催してきています。そもそも新宿レッドクロスとの関わりというと?
ミッシェル解散して、ほどなくして、2004年の7月にYOKOLOCO BANDと古市コータローさんと一緒に出たのが最初だったと思います。
■「THE WHO来日万歳DAY」ですよね。
そうだ。WHOのカバー、やりました。
■レッドクロスは小屋としてはどんな印象を持っていますか?
演奏していて、後ろまで見えるところがいいですね。音響的には生音重視というか。あの雰囲気も好きです。もともとレッドクロスのオーナーの猪狩さん(猪狩剛敏氏)とは古い仲で、猪狩さんはストライクスというバンドのギタリストで、ミッシェル時代から面識はあって、解散後、仲良くさせてもらっていたんですよ。レッドクロスの冊子があって、ひょんなことでコラムの連載をさせてもらうことになり。
■それが「新宿夜話」ですよね。
そうです。で、猪狩さんから「原稿料代わりに、うちに来たら、お酒はただでいいから」って言われて、調子に乗って、リハーサルが終わった後とかレッドクロスでただ酒をくらったりして、猪狩さんといろんな話をする中で、震災があって、バンドマンにできることはないだろうかってことになった。震災直後は電力不足って言われていて、ライブハウスでもキャンセルが出ていたし、じゃあ、なるべく電気を使わないイベントをやろうかってスタートしたのが「緊急ナイト」ですね。いてもたってもいられなかったというのが正直なところで。ボランティアに行くというタイプでもかったので、違った形で何かしたいなってことで、こうなりました。
■クハラさんはイベントの言い出しっぺであり、出演バンドのメンバーであると同時に、一日店長として、バーカウンターに入って接客もやられたんですよね。
自分はバカスカ叩くしかなかったので、自分がどうやって出たらいいのか、まったく浮かばなかったので、ああいうことになりました。弾き語りできる人とか、フラカンのアコースティック・ユニットに出てもらったりして、自分は店長をやろうかなと。まあ、最終的にはバンドでガシャガシャやったりもしたんですけど(笑)。
■「緊急ナイト」も20回近くやっています。継続しているところも素晴らしいですね。
それはハルさん(大木温之)、淳(鈴木淳)、ようこちゃん(うつみようこ)、コータローさん(古市コータロー)というレギュラーの人たちとレッドクロスのスタッフの協力があってこそ、そしてもちろん集まってくれるお客さんがいてくれるからこそ、ここまで続けてこられたということですよね。
毎回ゲストが参加する豪華かつレアなステージ
緊急バンドで仕掛けられたドッキリ
■遠藤ミチロウさん、花田裕之さん、加藤ひさしさん、延原達治さん、藤井一彦さん、ウルフルケイスケさん、ヤマジカズヒデさんなどなど、毎回ゲストの方も参加して、しかも歌謡曲とか多彩なカバーも演奏されていて、毎回、豪華かつレアなステージになっています。これは?
せっかくだからひとつのショーとしても面白味のあるものにしたいなって。ワイワイ楽しんでもらって、笑ってもらって、ガンガンお酒を飲んでもらって、で、「緊急ナイト」って何であるんだろうなって、自分も含めて、ちょっとでも考える瞬間を持ってもらえたらいいなあって思ってます。声高に言うのもどうなんだろうって思う節もあるので、ちょっと斜に構えているくらいが自分には合っているのかなって。
■「緊急ナイト」、緊急バンドでのエピソードで、今、思い浮かぶことは?
TOSHI-LOW(BRAHMAN)が弾き語りで出てくれた時に、TOSHI-LOWのステージが終わって、緊急バンドのステージが終わって、アンコールで緊急バンドで出ようとしたら、「じゃあ、『雨上がりの夜空』ね」ってTOSHI-LOWが言うから、“えっ、予定にあったっけ?”って思ったら、TOSHI-LOWがドラムの前に座っていて、オレが歌わされたというドッキリがあったという(笑)。「やめてよ~!」って(笑)。
■それはかなりレアな光景ですね。
内々で打ち合わせしてたらしくて。
ドッキリって、こうやってやるものなんだなってわかりました(笑)。
■歌ってみて、どうでしたか?
向いてないですよね(笑)。でも「緊急ナイト」だし、みんな、楽しそうに盛り上がっていたし、まあ、そういうのもいいかって(笑)。
■「緊急ナイト」の醍醐味って、その場所でしか生まれないセッションの熱、スリルみたいなものなんでしょうね。
2回目か3回目に、加藤さんが歌って、コータローさんとヤマジくんがギターを弾く場面があったんですよ。ふたりとも大好きなギタリストなんですが、タイプが違うし、まさかこのふたりが一緒にギターを弾いている場面を観られるとは思わなかった。個人的にも楽しくてうれしい瞬間でした。自分としては、そんなに大層なことができるわけではないんですが、生演奏を観てもらって、“ああ、生っていいなあ”って、ちょっとでも気分が良くなってもらえたらうれしいですよね。そこだけかな。
■「緊急ナイト」は、クハラさんと繋がりのあるミュージシャンがたくさん出演されていて、ミュージシャン同士の交流の楽しさも伝わってきますが、ライブハウスって、そういうミュージシャン同士の繋がりができる場所でもありそうですね。
そういうところはあるかもしれないですね。組んでもらった対バンに刺激を受けることもありますし。ミッシェルの頃にヤマジくんのdipと対バンしたことがあるんですよ。それから10年以上経って、ヤマジくんと一緒にやるようになって、「ずっと前にやったよね」って話になったりして。当時はお互いに楽屋を締め切っていたので一切話してませんけど(笑)。時間が経って、当時の懐かしい話になって、そこから付き合いが深くなったりするのも悪くないかなと。