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SPECIAL INTERVIEW
田中宗一郎(編集者、音楽評論家、DJ)

それは“洋楽文化の歴史”でもある。
田中宗一郎に訊く「海外アーティストにとっての“日本”とは?」

インタビュー・文/照沼健太
 
田中宗一郎
編集者、音楽評論家、DJ。雑誌〈ロッキング・オン〉副編集長を務めたのち、雑誌〈スヌーザー〉を創刊。現在はWEBメディア〈ザ・サイン・マガジン〉クリエイティブ・ディレクターを務めている。
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ベック×ミッシェル・ガン・エレファント!?
田中宗一郎が間近で見た、数々の「伝説」
■クラスヌ出演アーティストや、取材したアーティストで日本を気に入っていたアーティストといえば?
一番最初に思い出すのはベックかな。彼の初来日も確か94年なんですけど。ベックはとにかく日本の文化への興味やリスペクトがすごくあった人で。当時はボアダムズが大好きだった。デヴィッド・ボウイのような広範囲な知識に裏付けされた日本への見方とも、一般的なエキゾティシズムを日本に投射するファンタジーとも違っていて、リアルタイムのアンダーグラウンド文化への興味を通して日本を見ていた。実際、彼自身のリクエストで、来日公演には中原昌也くんがやってた暴力温泉芸者がサポート・アクトとして参加したり。彼、今はサンローランばかり着てるけど、ある時期は全身ナンバーナインを着ていたりとか。

一時期、LAやニューヨークに取材に行ったりすると、彼だけじゃなくて、彼の当時のガールフレンドとそのルームメイトと4人でハング・アウトしてた時期があるんですけど、全員が全員とも日本のカルチャーにすごく興味があって。僕が『ウルトラセブン』に出てくるガッツ星人の小さなフィギュアを鞄につけていたら、「そのデカいフィギュアを部屋に飾ってるんだよ!」みたいに大興奮したりだとか。彼ら、『スヌーザー』をずっと読んでくれてたから、ミッシェル・ガン・エレファントがLAでライブをした時にも全員でライブを観に行ってるんですよ。で、その後の『スヌーザー』の取材の撮影の時って、彼のガールフレンドがスタイリングをしたんだけど、ベックがセックス・ピストルズのスティーブ・ジョーンズにもらったセディショナリーズのガーゼシャツに、ライブの物販で買ったミッシェルの缶バッジをつけてフォトセッションをしたり。
■うっわ、それはすごいですね。とても幸福なエピソードを色々伺ったんですけど、逆に事件といえばどんなことを思い出しますか?
やっぱりリバティーンズかな。初来日は<サマーソニック>だったんですけど、その後の単独ツアーの時のこと。当時のマネージャーの女の子からの金払いが悪くて、バンドは本当に一文無し状態で。ツアー前半の札幌のライブの最中にピートとカールが大げんかしたらしいんですよ。一度は3曲くらいで終わって、結局またやることになったんだけど、アンプを壊しちゃったから、その後はずっとアコースティック・ライブというありさま。2人に言わせると、バンドはそこで一旦解散したらしいんだけど、クラブ・スヌーザーに出てくれたのはその直後なんです。イベンターのスタッフも戦々恐々としてて、演奏が終わると、その日のギャラはその場で現金払い、みたいな(笑)。

その日はカールが真っ赤なナポレオンジャケットを着てて、それを客席に投げ込んだら、翌日にヤフオクで5万円くらいで出品されてた。でも実は札幌のライブ後に2人で街に出て、ススキノの風俗営業のサンドイッチマンが着ていたジャケットを無理やり強奪したものらしくて(笑)。当時のリバティーンズは取材時にフィッティングしたリーバイスを2枚履きして持って帰ろうとしたり、とにかくメチャクチャ(笑)。で、結局、日本でのツアー時にピートとカールの関係がおかしくなって、当時のマネージャーを解雇するんだけど、その後アラン・マッギーがマネージメントを買って出るようになって、二人の関係はさらにおかしくなっちゃうんですね。だから、リバティーンズの亀裂は日本で始まったんですよね。
日本のミュージシャンが海外へ進出するためには?
■最後にお聞きしたいのですが、逆に日本のミュージシャンが海外で成功する際に必要だと思うものはなんだと思われますか?
日本に対する海外からのイメージをどう乗りこなすか?ってことじゃないですか。そもそもこちらも向こうもエキゾチックな誤解から始まってるわけだから。例えば、BABYMETALにしろ、BO NINGENにしろ、彼らはエキゾチシズムを使う時も、欧米の文脈をきちんと理解しながら活動してるでしょ。多分、90年代のコーネリアスやボアダムズはそこまで意識的ではなかったと思います。単純に彼らがやっていた音楽が世界的に見て最先端だったから受け入れられた。でも、perfumeやきゃりーぱみゅぱみゅ以降というのは、かなり意識的に欧米のマーケットで何を発信できるかというのを考えているアーティストが増えてますよね。

例えば、フランク・オーシャンにフック・アップされたKOHHにしても、KEITH APEの「It G Ma」のヴァースに客演した時に「ARIGATO」と言うわけじゃないですか。リリックの文脈に沿ったまま、あえて誰もが知ってるだろう日本語を使ってる。意識的にエキゾチシズムを使いながら、やりたいことをやろうとしてる。海外のブッキング・エージェントがついて、今はアメリカ西海岸を拠点にしてるQrionにしても、今年を象徴するアルバムを作ったMitskiにしても、日本人が欧米で暮らしたり、受け入れられることの難しさをむしろ作品や活動の中にすくい上げようとしてたりもしますからね。今後こういう作家が増えてくると一気に色々変わってくるんじゃないかとは思います。
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