店長の意見も、一応聞いてはいたよ。
半分聞き流しながら(笑)。
■ほかに、1980年代初頭の東京のライブハウスには、どんな印象がありますか。
渋谷だと、屋根裏かな。3階まで続く階段があって、1階がパチンコ屋で、2階がキャバレーで、一番上に屋根裏があるんだけど、アンプとか運ぶのが重くてさ。2階で休んでると、おねえさんが来て「ちょっと寄ってきなさいよ」「いやー、お金ないっすよ」とか言って。「今日ここでライブがあるんですよ」「そう、頑張ってね」とか、そんな感じ。屋根裏に最初にBOØWYが出た時は、客が来るのか来ないのかわかんないからって、けんもほろろに扱われたな。“お前ら、客呼べるの?”って。それが思った以上に客が入ったとたん、手のひら返して「来月もお願いできませんかね」とか言うから、バカヤロー!って。
■バンドあるあるですね(笑)。
La.mamaでもやったことあるよ。大学のイベントに呼ばれて、夜中に。アナーキーの(仲野)茂が遊びに来てて、「INSTANT LOVE」を歌わせろって言い出して。歌ったんだけど、♪インスタントラブ、酒場の娘~とか歌って、BOØWYのファンが泣いたっていう(笑)。“やめろバカヤロー、歌えねえじゃねえか!”って。そういういい加減なこと、よくやってたんだよ。
■あはは。面白すぎます。
下北沢LOFTでも、やったことあるよ。狭いし、大きい音は出せないんだけどね。今の社長は、俺の福島の同級生の弟がやってるんだよ。(長沢)幹夫っていうんだけど、その前に新宿LOFTの店長をやってて、行ったらいるから、「おまえ、なんでこんなとこにいるんだ?」「店長やってます」「おお、偉いじゃん」とか言って。「終わったらビール持ってこい!」とか言ったら、ちゃんと持ってきて、みんなが「この店、気が利くね」って言うから、俺の知り合いなんだよって。今はほとんど店には出てなくて、釣り師になってるけどね(笑)。
■楽しい思い出ばかりですけど、あえて、ライブハウスで嫌な思いをした経験は?
いやー、あんまりないかな。昔、店長が俺たちより年上だった頃は、意見をされたりしたこともあったけどね。的を得ていることもあれば、的を外してることもあったけど、一応聞いてはいたよ。半分聞き流しながらね(笑)。そういうことはあったけど、あんまり嫌なことはなかった。対バンとケンカになりそうになったことは何回かあるけどね。千葉の(dancing)mothersで、ストリート・スライダーズと一緒にやった時とか。結局ならなかったけど。
■BOØWYとスライダーズが、一触即発ですか。
そう。お互いちらちら見てて、“なんだよあいつら”って、チンピラの睨み合いみたいな感じ(笑)。若気の至りってやつだな。あいつらが先に出てる(デビューしてる)から、こっちとしては、やっかみ半分のところもあったから。でもそこで、“よう!”ってなっちゃうのは、なんか面白くないじゃん? ARBとかアナーキーとかも、最初は斜めで見てたからね。先に出てるし、売れてるし、すげえなと思いながら。そのうち俺たちも上がってきて、ちゃんとレコードを出せるようになってからは、わりと仲良くなってきたけどね。やっぱり一個一個階段を上がっていかないと、いきなり“どうもこんにちは”っていうのも変だし。そうやって上がっていくと、俺たちがLOFTを満員にしたとか、そういう話が絶対伝わるから、“へえ、すげえな”って、認めてもらえるようになるから。
■なるほど。
アナーキーの茂なんて、今でも俺のことを「まこと!」って呼び捨てにするけど、「バカヤロー、おめえよりもこっちは7つも年上だぞ」って(笑)。まあ、そんな感じだったんだよ。
武道館ぐらいがちょうどいい。
またやってみたいね。
■話は一気に飛んで、最近のライブハウスはどうですか。数も増えましたし、設備のいいところもありますが。
よくできてるよね。昔のいいところも悪いところも、全部見てきたような人たちが作ってるだろうから、使い勝手は良くなってるよね。きれいだし。ただ、店を存続させなきゃいけないから、店ありきなのか、ミュージシャンありきなのかというと、逆転してるんじゃねえかという気はするけどね。昔は、ミュージシャンにいい演奏をしてほしくて、“おまえら頑張れよ!”っていう力の入れ方をしてくれたところが多かったけど、今は貸し小屋になりつつあるというか。場所を提供するから、お金を払ってくれれば好きにやっていいよというところが、感じられなくはないな。
■ああ。それは、そういう面もあるかもしれない。
ただ、札幌みたいに、ライブハウスというよりも、ライブ・バーみたいな店が多いところもあって。ビルの中の一室がライブ・バーになっていて、店員が全員演奏できて、歌いたいですって言うとバックをやってくれる。(Bar&Live
Space)チャックベリーとか、そのタイプだね。来日したエリック・クラプトンが、演奏できるところはないかって、のこのこやってきて、セッションしていったって。札幌にはそういうところがけっこうあるんだよ。カントリー専門とか、ロック専門とか。ライブハウスとは違うけど、そういうのは面白いと思うな。
■もうひとつ、<東京>というテーマで質問したいんですけども、まことさんにとって、東京はどんな場所ですか。
そうだなあ。今は自宅で録音とかできるようになったから、別に東京に行かなくてもなんとかなると思ってる人も多いかもしれないけど、俺たちの時代は東京に行かなきゃダメだと思ってたから。東京に行って一旗揚げるというイメージはあったね。あと外タレが来ても、絶対東京じゃん? 俺もBBA(ベック・ボガート&アピス)、ドゥービー・ブラザース、イーグルス、ジミー・クリフ、ブラザーズ・ジョンソンとか、けっこう見たな。ヴァン・ヘイレンも、一番最初に来た時に見たし。東京はライブ天国でいいなと思ったね。
■武道館も、思い出深い場所じゃないですか。
BOØWYでもDe+LAXでも、あそこに立ってますし。
武道館は気持ちいいね。ドームクラスになると、何やってるんだかよくわからんし、客もちゃんと聴こえてるの?って思うから。でかすぎるのも何だよね。武道館ぐらいがちょうどいいんじゃないの? 盛り上がるには。またやってみたいね。
■まことさん、JET SET BOYSで武道館を目指すぞと、公言してます。
とりあえず言ったもん勝ちで(笑)。できてもできなくても。
■その、JET SET BOYSの活動について。アルバムが6月に出て、ツアーを7月までやって、一段落したところだと思うんですけども。今後の予定は?
今日もこのあと、プリプロだもん。また新曲を作るから。
■マジですか? うれしい。
ツアーで新曲をやってて、せっかくだからレコーディングしちゃおうかって、それもやってる。けっこう意欲的だよ。もうこれで終わりなの?って言われちゃうと嫌なんで、次を見据えて。「来年もまたアルバム出すぜ!」って言っとかないと。
■JET SET BOYSは、まことさんが還暦を超えて組んだ、決意のバンドですから。また近いうちにライブが見られることを、楽しみにしてます。
いくら長くやってても、ライブが始まっちゃうとキャリアもクソもねえし、その時が一番良くないとダメだという思いで行くからね。とにかく体をいたわりつつ、頑張りますよ。
取材協力:CAFE&BAR LIVRE 03-3324-3973
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