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SPECIAL INTERVIEW
柴 那典 (音楽ジャーナリスト)

悲観を超えてタフなインディーが生まれた。
柴那典に訊く「2016年、東京の音楽シーンでは何が起こっているのか?」

撮影・インタビュー・文/照沼健太
 
柴 那典 (音楽ジャーナリスト)
1976年神奈川県生まれ。ライター、編集者。音楽ジャーナリスト。出版社ロッキング・オンで『ROCKIN’ON JAPAN』『BUZZ』『rockin’on』の編集に携わり、その後独立。雑誌、WEB、モバイルなど各方面にて編集とライティングを担当し、音楽やサブカルチャー分野を中心に幅広くインタビュー・記事執筆を手掛ける。
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成長痛としての2016年問題、
ライブハウスの未来、クラブの変化
■2020年の東京オリンピックに向けて、東京各地のコンサートホールが改修工事などのために閉鎖し、ライブ会場が不足する「2016年問題」という話題を聞きますが、実際のところ影響などは表れているのでしょうか?
2016年問題は新陳代謝の問題なので、我慢するしかないというのが実際のところですね。多少はチケットが取りづらかったり、見えないところで開催されなかったライブがあるかもしれないけれど、音楽ファンにとってはその影響は分かりづらいと思います。そして2016年もすでに半分の折り返しを過ぎている。これからは新しいハコが増えるし、リニューアルが完了してまた使えるようになる。「問題」として認識はされているけど、徐々に悪くなっていく問題ではなく、都市と音楽の関係がもっと良くなるための成長痛としてとらえるべきではないかと思います。
■今後東京はインフラ的な部分ではどう変貌していくのでしょうか?
東京の床面積が増えていくのは間違いないでしょう。世界的にあらゆる都市が集積してきていて、都市内に人が住み、働くようになってきている。そういう流れがある以上、東京もそうしたメガシティ―になっていくことが予想されます。でも、食って働いて寝てだけで生きていけるわけはなく、エンタメは絶対に必要です。そう考えると、どんどん人が集まれる街になると思います。会場問題というのは、基本的には騒音問題なんですよね。つまりそれって、音をコントロールする音響技術が発展すればするほどクリアされていくはずで、今後は都市内のライブハウス、ライブヴェニューはもっと高層化していってもおかしくないと思っています。ある種の妄想めいた話ですけど。幕張メッセの大きさの会場が37階にあるとか、六本木ヒルズの地下7階にあるとか、そうした未来が来るんじゃないかとも期待しています。
■風営法の改正もあり、再びクラブ文化が活性化されることも予想されますね。
まず風営法に関して言えば、たくさんの人たちの地道な努力がちゃんと実って良かったと思っています。時代遅れの法律でエンターテインメントを縛るのは、健全な文化の発展を阻害することでもありますので。ただ、東京という街の特性として「終電問題」というものがありますよね。NYとかに比べると、東京ってどうしても終電で帰らなきゃいけない圧力がすごく強い。今後は住んでる街の近くにクラブができて、タクシーで1000円程度で帰れる範囲で遊ぶという流れになるんじゃないかと思います。ライブハウスに比べると、クラブというのは小さいハコでも構わないので、一杯引っ掛けるくらいの感覚でより生活に近づいていくのではないでしょうか? デカバコは六本木とか渋谷とか新宿にあればいいので、自分の家から近い場所に馴染みのクラブがある、それが理想に近いと思います。これは個人的な話なのですが、学生時代に京都に住んでいたのですが、そこがメトロというクラブから徒歩5分くらいで、徒歩で帰れるすばらしさを痛感しました。それに京都という街は、学生がほとんど自転車で移動するので、終電問題が存在しないんですよね。あれくらいのサイズを街の単位とした方がいいと思いますよ。

悲観の季節を超え、タフなインディーが生まれた
■東京インディーやシティーポップの盛り上がりが取り沙汰されて久しいですが、そうした音楽シーン的な視点から見ると、2016年の東京はどのような状況でしょうか?
実は東京インディーというのは、ある種の中心となる人たちがいて、その人の周りにおもしろいバンドやメディアやデザイナーが集まることでムーブメントになっていったものだと思っています。曽我部恵一さんや向井秀徳さん坂本慎太郎さんのように、それまでメジャーでやってきた人たちがインディーでやっているという流れもありつつ、カクバリズムの角張渉さん、P-VINEの柴崎祐二さん、BAYON PRODUCTIONの北澤学さんのような人たちが作り上げたものですね。かつてのインディーは、人気が出てきたらメジャーに行くという予備軍のようなものでしたが、今は違います。そうしたメジャーに行くというルートを選ばないままで心地よくやっているというのが、この2016年のムードですね。
たぶん東京インディー的な音楽というのは、2010年代以前もあったけど、サニーデイ・サービスやフィッシュマンズがそうだったように、良質なものはやはり全国区で売れることを目指していたと思うんです。だけど2016年において彼らはそうした道を選ばずにやれている。そうした選択肢がとれるのは、東京という街が豊かだからだし、文化が成熟しているからなんですね。そういう意味で2016年は大きな変化が生まれている年というよりは、成熟した年だと思います。今振り返ると2010年とか2011年って、みんなもっと悲観的でしたよね。CDが売れないこととか含め、もう音楽が続けられなくなる、音楽なんてやってられないみたいな閉塞感がありました。でも2016年においては、ある意味開き直りかもしれないけど、全国区を目指したいやつは目指せばいいけど、基本的には仲間内で楽しくやれればいいいし、食えなくても仕事を続けながらやるよ、みたいなタフな空気がありますよね。それはインディーイズムとしては正しい、健全な状況だと思います。東京における「インディー」の意味はここ数年であきらかに変わりましたね。
■ネットの普及により東京と地方の差は縮まったとする意見も、広がったとする意見もあります。これについてどう思われますか?
縮まったのは機会と可能性の差ですね。しかし、文化の差は多様性という意味で広がったと思います。東京と福岡の音楽は別物になったけど、どちらにしても「見つかる」ことはできるようになりましたね。
■最後に、柴さんが選ぶ東京の音楽スポットといえばどこでしょうか?
武道館ですね。これまで話してきた渋谷、新宿、下北沢、そのどこでもない東京のど真ん中に音楽の聖地があるのは、すごく良いと思います。もともと音楽のための会場ではなく、武道の聖地ですが、どんなバンドもアイドルも目指す場所として武道館の名を出します。そんな誰もが目指す場所が、東京の一番真ん中、しかも都市の空洞にあるのは、どこかこの東京や日本を象徴していると思います。
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