人はいつしか、丸くなる。
昔、素敵にとんがっていた彼女と久しぶりに会ったら、とても丸くなっていた。地元のつまらない先輩ーー仕事も話もつまらないうえにチビでデブでハゲーーと結婚し、子をもうけていた。私が憧れたあの彼女は、どこに行ってしまったんだ。見る影もない。目も当てられない。何をやってんだよ。
ただ、幸せそうではある、嫉妬するくらいには。どうしてだろう。
自分もそうなりたいと、どこかで思ってしまっているからだろうか。
人は、歳を重ねるうちに、細かいことを気にしなくなっていく。脳にどんどん入ってくる情報を処理しきれなくなるゆえか、判断力が低下するからか。それとも、細かいことを気にしたところで人生がいい方向に運ぶことなどない、と気付いた悟りの一種だろうか。老い先短い人生に、波風立てまいとするようになったということだろうか。
どういうことなのだろう。どうして、丸くなってしまったのだろう?
と、私は、私の、膨らんだ腹をさすりながら考える。
明るい未来を信じられない時代に、新しい扉を開く女性と開くことを諦めた女性を極力丸く描く、現代の招日神話会話劇。
【STAFF】
脚本・演出:古川貴義
舞台美術:稲田美智子
照明:瀬戸あずさ(balance,inc.DESIGN)
音響: 田中亮大(Paddy Field)
音響操作: 角田里枝(Paddy Field)
舞台監督:藤本貴行(株式会社RESON)
衣裳:中西瑞美(ひなぎく)
記録写真:鏡田伸幸
演出助手:花奏和音
制作:松本悠(青春事情)
企画製作:箱庭円舞曲
協力:キムライヅミ、ELBS Entertainment、株式会社シアターナインス、株式会社JFCT、kitokito、クリオネ、東宝芸能、レプロエンタテインメント
【会場】
新宿シアタートップス