【名古屋城コミュニティ・アーカイブスの可能性】
名古屋城の公的な記録は比較的多数残されており、そのために本丸御殿の忠実な復元ができたほどです。公的な記録写真は撮影意図がはっきりしており、無駄なものや意図から外れるものは写されていないはずです。一方で、個人のスナップ写真は道ゆく人が写り込むなど偶然捉えてしまうものが多数あるでしょう。そんな偶然の出会いを集めると一体どのような名古屋城の姿が見えてくるのか。公的な記録からは見えてこない名古屋城の様々な顔や時代の様相、そして人々との関わりを、多様な個人のプライベートな記録を収集することで、集合知としての景=ひかり/かげとして描き出すことができるのではないでしょうか。
その一歩として、名古屋城の様々な記録に焦点をあてた展覧会「描かれた名古屋城、写された名古屋城」を企画された小西恒典さん、様々な地域で8mmフィルムを収集しそれらをデジタル化し上映するなど人々の記憶と記録にまつわるプロジェクトを展開してきたAHA![Archive for Human Activities /人類の営みのためのアーカイブ]の松本篤さん、そして京都市立芸術大学の移転に向けて卒業生が捉えた写真の集合により芸大の記憶と記録の再構築をするプロジェクトを推進する京都市立芸術大学芸術資源研究センター研究員でアートメディエーターのはがみちこさんのお話を伺いします。名古屋城に関する公の記録を知るとともに、様々な人の捉えた写真や映像が描き出す「景」がいったいどんなものか、可能性を探求していきたいと思います。
スケジュール:
17:30 本丸御殿ミュージアムショップ集合
18:00-18:00 導入あいさつ
18:10-18:40 小西さん発表
18:40-19:10 松本さん発表
19:10-19:40 はがさん発表
19:40-20:00 質疑応答
【小西恒典(秀吉清正記念館)】
2020年まで名古屋城総合事務所に勤務。2016年に企画担当した特別展「描かれた名古屋城、写された名古屋城」では、江戸時代から現代までの、名古屋城を主題とした絵画・図面・写真などを展示した。名古屋城は、他の城とは比べものにならないほど、豊富な絵画や写真が残され、かつての姿を知ることができる。今回は、どのような意図で名古屋城は写真撮影されてきたか、写り込んだものから何が読み取れるのかをお話ししたい。
【松本篤(NPO法人remoメンバー/AHA!世話人)】
1981年生まれ。「文房具としての映像」というコンセプトの普及に取り組むNPO法人記録と表現とメディアのための組織(remo)の活動に2003年から参画。市井の人びとの記録に着目したアーカイブ・プロジェクト、AHA![Archive for Human Activities/人類の営みのためのアーカイブ]を2005年から始動。記録集『はな子のいる風景』(武蔵野市立吉祥寺美術館、2017)、ウェブサイト『世田谷クロニクル1936-83』(生活工房、2019)、展覧会『わたしは思い出す』(せんだい3.11メモリアル交流館、2021)など、さまざまなメディアづくりに関わっている。
【はがみちこ(アート・メディエーター/美術評論家/京都市立芸術大学芸術資源研究センター研究員)】
2011年京都大学大学院人間・環境学研究科修士課程修了。同年より2021年まで東山 アーティスツ・プレイスメント・サービス事務局(現・一般社団法人HAPS)スタッフ。『美術手帖』第16回芸術評論募集にて「『二人の耕平』における愛」が佳作入選(2019)。主な企画・コーディネーションとして「國府理「水中エンジン」再制作プロジェクト」(2017~)、菅かおる個展「光と海」(長性院、Gallery PARC、2019)など。共著に『危機の時代を生き延びるアートプロジェクト』(千十一編集室発行、2021)。