2020年3月に開催されるはずだった個展『感情の作られ方』が延期されてから2年が
経とうとしている。
この2年間、世界にも私自身にも様々な出来事が降りかかった。それらを経て、創作に
おける私の興味・関心は「作曲とは一体どういう行為なのか」ということから、「音
楽そのものの在り方」に移っていった。
考えれば考えるほど、多くの人が言う「これぞ、音楽」などというものは存在しない
ように思う。
今回の個展では、2年前の内容を一新し、自分が感じてきた音楽への違和感を作品に昇
華させてみたい。
私にとっての音楽は、単にいっときの感動を与え、人を癒すためだけのものではな
い。
今創作活動で実践したいことは、慣習化してしまった規範やパターンを見直し、新た
な形へ脱構築すること。
あるいは、あえて伝統的な言い回し(=レトリック)を取り入れ、思いもよらない音楽を
提示すること。
「感動した!心揺さぶられた!」といった結果は一旦脇に置き、様々な方法を通し
て、今一度、音楽そのものを別の角度からくすぐってみたい。
坂東祐大|Yuta Bandoh──────────────────
作曲家、音楽家。1991 年生まれ。東京藝術大学作曲科を首席で卒業。東京
藝術大学音楽学部作曲科修士課程修了。様式を横断したハイブリッドな文
脈操作、サンプリングなどを駆使し、多岐にわたって創作活動を行う。第
25 回芥川作曲賞受賞(2015 年)。 2016 年、Ensemble FOVE を設立。代表と
して気鋭のメンバーと共にジャンルの枠を拡張する、様々なアートプロジェ
クトを展開している。またメインワークに加え、ジャンルを横断した活動
も多方面に展開する。映像作品に中島哲也監督作品 映画『来る』、米津玄師
『海の幽霊』『馬と鹿』『パプリカ』『カイト』(NHK2020 ソング)にて共同編
曲、宇多田ヒカル『少年時代』にて共演。 主要作品に『花火 - ピアノとオーケス
トラのための協奏曲』( サントリー芸術財団委嘱作品 )『 TRANS』( 京都芸術センタ
ー Co-program 2018) がある。