あの“衝撃の事件”から一年、パンドラの箱を開けるのはこれからだ―
2022 年 9 月 27 日、日本武道館で行われた国葬。その同時刻、渋谷では、ある一作が上映されていた――。 上映が終わり、ライトアップされたステージの先に立っていたのは、監督・足立正生。その作品は 2022 年の 8 月末に密かに クランクインし、8 日間の撮影、間髪入れずに編集作業に突入、クランクインから一月後にあたる国葬当日に緊急上映を行 うという離れ業を演じた。足立正生が 6 年ぶりに描くのは、安倍晋三元首相暗殺犯の容疑者。民意をも無視を決め込み、国 会は機能を停止。そのような状況下で再び、映画の持つ創造力と荒々しいスピードを取り戻した。容疑者の犯行を人はテロ と呼び、民主主義への最大の挑戦と呼んだ。しかし、それは本質をついているだろうか。この犯行をきっかけとして、政治 家と統一教会の尋常ならざる癒着ぶり、保守を標榜する政党の爛熟の果ての退廃ぶりが公に晒された。この映画はもちろん、 その是非を問うものではない。しかし、シングルマザー、宗教二世、派遣労働と、この国の貧困を体現してきた一人の男が 自分と対極にある一人の男に銃を向ける、それに至る過程を描くことで、この国に決定的に欠けているものを知らしめるこ とになることを望む。
18:00 開場
19:00 「REVOLUTION+1」上映
20:20 トークイベント
21:50 終演
【トーク出演】鵜飼哲(一橋大学名誉教授)、平井玄(文筆家)、望月衣塑子(東京新聞記者)、足立正生(本作監督)
(足立正生監督コメント)
日本社会の閉塞情況が、溜まりきった怨念の銃弾によって突破されようとした。自民党と元 統一教会の歴史的な癒着だけでなく、日本の民主主義の根幹に巣食う欺瞞性を撃ち抜き、 実態の暴露に向かわせた。重たいパンドラの箱蓋が一気に開きかけたが、腐敗した日本の 権力機構とそれに媚を売るマスメデイアの忖度システムが強引に保守し、その蓋を抑えつけ て閉じようとしてさえいる。私たちは、安倍元首相銃撃事件を即座に映画に作り、それを上 映し続けて来ている。日本型の民主主義の欺瞞を許してはならない。断固として、パンドラ の箱蓋をこじ開け続けなければならない。そのために、怒りを満身にこめて、語り続ける。